関西最大級の研修センター"OTEC(オーテック)"を開設、その実態は?そして「スタンダードマニュアル77」とは?

タクシー乗務員にとって、運転技術と同じくらい重要な要素なのが接客スキルです。そのスキル・マナーを徹底指導するために研修センター「OTEC」が、2017年に開設されました。この研修センターでは、具体的にどのような研修が行われているのでしょうか。今回は、OTECについて、そして、乗務員のためのマニュアルであるスタンダードマニュアル77などについて、詳しく紹介します。

OTECを共同運営している「さくらタクシー株式会社」「東京・日本交通株式会社」は、どんな会社?

業界最大売り上げを誇るタクシー会社である「日本交通株式会社」の関連会社2社が、合同でタクシー・ハイヤー研修センターとして開設したのが日本交通グループ、通称OTEC(オーテック)です。OTECを運営している2社のうちのひとつである「さくらタクシー株式会社」は、1951年(昭和26年)に創業されました。創業から60年以上大阪を中心とした関西圏で地元民から「さくらさん」の相性で親しまれています。一般の個人利用から大手企業やマスコミ各社まで、幅広い層にリピートされているタクシー会社です。



さくらタクシー株式会社は、2016年に日本交通株式会社の傘下となりました。日本交通株式会社の長年の実績に加え、さくらタクシーがお客様から数十年にわたって得た信頼を一体化させることで、企業として飛躍に成功しました。また、季節ごとにユニークなイベントを行うこともこの会社の特徴で、そのうちのひとつが「さくらハロウィンタクシー」です。タクシーのボディ部分に、フランケンとドラキュラの可愛いイラストをあしらったタクシーが、ハロウィンの季節限定で大阪の街を走ります。ハロウィンタクシーを利用されたお客様にはお菓子の配布サービスもあり、遊び心ある企画は利用者から好評を得ています。



OTECのもう一方の運営会社は「東京・日本交通株式会社」です。この会社は、日本交通株式会社の傘下となる前から長い歴史があったさくらタクシー株式会社とは異なり、日本交通株式会社の100%出資による子会社としてスタートしました。2014年に設立された、まだ歴史の浅い会社ですが、会社名の通り東京を始め大阪・神戸と三つの大都市で大々的に営業を展開しています。タクシー台数600台以上、乗務員数230名とここ数年で急成長を遂げている会社です。



急成長の秘密は、親会社である日本交通株式会社が長年培ってきた接客に関するノウハウにあります。お客様を第一とした接客スキルにより、観光タクシーとしての業界進出・ハイヤー専用ドライバーに匹敵する質の高いサービス提供など、乗務員の教育を徹底していることも特徴です。この、2社が接客スキル・マナーのさらなる向上を図るために開設されたのが、OTECなのです。

OTECの開設、そのきっかけは?

OTECは、2017年6月5日に先述した2社によって開設されました。両社とも以前からサービスにかけては最新の注意を払っていたにもかかわらず、なぜ、改めて、研修センターを設けようと思ったのでしょうか。その理由は、時代の変化にあります。タクシー業界における時代の変化とは、自家用車の所有者と乗車希望者をマッチングさせる「ライドシェア」、自動車運転技術の進展など、新しい勢力の台頭です。それまではタクシー業界が引き受けていたエリアに他の勢力が出てきたため、タクシー業界のひとり勝ちという図式は崩れようとしています。



そのため、タクシー業界のなかでも、業界大手であるさくらタクシー株式会社と東京・日本交通株式会社の2社は経営に関する方針を変えざるをえない状況に追い込まれたのです。2社が具体的に出した打開策は「タクシー会社がお客様を選ぶのではなく、お客様から選ばれる移動手段」ということを念頭において営業をすることです。この方向性を推進して、企業としてさらなる成長をすることが、2社が出した答えとなりました。



2社がOTECを開設するにあたり、打ち出したテーマは「人だからできるサービスを提供する」ことです。このテーマを会社側が昇華するためには、乗務員の徹底した教育を施さなくてはいけません。まだタクシー乗務員としての経験がない新人一人ひとりに、お客様のことを最大限まで考慮したサービスについて教育することが狙いです。そして、そのサービスを実施するためには、何をどうすればいいのかということを徹底して教えることが、OTECの目標といえます。「安心・安全・快適」という3つの要素を乗車されたお客様に与えることによって「またこの会社のタクシーに乗りたい」と感じてもらえる気持ちがより増えることが、OTECの存在意義なのです。
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サービスの均一化を目指す研修!

OTECとは「Osaka Training & Education Center」の略であり、文字通り大阪にある研修センターです。この施設は常時36名・最大100名を受け入れることが可能で、タクシー乗務員研修施設としては、関西最大級の規模を誇っています。この施設に送り込まれるのは、さくらタクシー株式会社の福島・加島営業所、東京・日本交通の難波・守口・京都・神戸営業所の合計6拠点に入社となった新人たちです。各地で働く予定の新人たちをひとつの研修センターに集めるのは「サービスの質の均一化」と言う理由が挙げられます。

タクシー乗務員が対応するお客様は、年齢や国籍、社会的地位などさまざまなタイプがいます。あらゆるスペックを持つ多様なお客様に対して、分け隔てのない・ムラのない接客をすることが、タクシー乗務員の仕事です。そのために、各営業所に合わせて各地に研修センターを設けるのではなく、新人一同を同じ場所に集めてまったく同じ研修を受けてもらうことによって、サービスの均一化を図るというのが、OTECの狙いなのです。

各地から集められた、まだタクシー乗務経験のない新人たちは初任研修を実施します。営業所によってサービスの質のばらつきが発生することを防止するために、新人一人ひとりに「タクシー乗務員がお客様に提供するサービスとは何か」ということを、徹底して教育します。

タクシー乗務員デビューしても研修は受けられる!

新人研修が終わり、晴れてタクシー乗務員デビューを果たしても、研修は終わりではありません。さらなる高品質のサービスの向上を目指して、次に行うのは「観光タクシー運行のための実施研修」です。この段階では、観光客を対象とした観光タクシーや外国人観光客の対応など、高度な接客トレーニングを実践します。具体的な内容は、観光地の案内や車内環境の調整、英語など他言語での接客などについてです。そして、タクシーよりも高度なサービスが要求されるハイヤー乗務員の個別教育もあります。ここで学ぶことは、ドアサービスやラゲッジサービス、乗降車における介助などです。

また「女性タクシー乗務員のためのフォロー研修」「ユニバーサルドライバー(UD)研修」といった特化した分野、あるいは「認知症サポーター養成講座」「救急救命(AED)講習」「助産師講習」など、トラブル発生時の対応も教えています。仕事中は運転以外に、どんなトラブルが起きるかは予想できません。そのようなときに備えて、トラブル対処の知識やスキルも覚えてもらうことが、研修の目的です。

OTECで指導する教官は、豊富な乗務経験とスキル・知識を持つ資格所有者が担当します。共感が所有している資格は、安全運転指導者、運転適性検査資格といった所有するのに難易度の高いものばかりです。これら資格所有者のなかから、さらに選抜された乗務員が、確かな指導により教育を行います。
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OTECでの研修、経験者の感想は?

OTECで研修を受けた新人たちは、充実した研修が受けられたという感想が多く見られます。研修を受けた新人のひとりは「タクシー乗務員に関する研修なので、運転テクニックや交通安全についてだけの研修だけと思っていたら、接客マナーなども丁寧に教わることができた。この研修のおかげで仕事ではお客様と円滑なコミュニケーションを取ることができている」という感想を述べています。また、別の新人の感想は「教えてもらうポイントが明確だったので、目標をしっかりと定め流ことができた。研修で学んだことは、即、仕事で役立てることができた」という意見です。

そして、ほかの新人は「研修が終わって終わりかと思ったらそうではなかった。研修終了後も月に1度定期研修があり、参加すると学んだことが仕事に役立つことばかりだ。古い知識だけでなく、新しい知識で頭のなかがアップグレードできるのが研修の良い点だ」と述べています。こららの感想からOTECがいかに新人たちにとって仕事に役立ち、心強い味方であるかはわかります。
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タクシー乗務員のバイブル「スタンダードマニュアル77」とは?

OTECが開設される以前から、さくらタクシー株式会社と東京・日本交通株式会社の親会社にあたる日本交通株式会社が作成した、タクシー乗務員のためのマニュアルがあります。それが「スタンダードマニュアル77」と呼ばれる小冊子です。このマニュアルは、2007年8月、日本交通株式会社の三代目代表である川鍋一朗氏によって発行されました。このマニュアルには、サービスの質の向上および維持を図るうえで、実施するべき77の項目が掲載されています。当初は項目数が80だったため「スタンダードマニュアル80」というタイトルだったのですが、その後、項目を整理して77となりました。

このなかで挙げられている項目は、挨拶の仕方・身だしなみ・車内でやってはいけないことなどです。項目を抜粋すると「運転席周りに私用のペットボトルを置いてはいけない」「お守りをぶら下げてはいけない」「女性上乗務員はネイルをしてはいけない」などです。細かい内容ですが、項目をしっかりと守る・守らないとではお客様の反応も違うため、マニュアルがしっかりと守られているか、チェックも厳しく行っています。チェック方法は、250人もの覆面調査員が日本交通株式会社のタクシーに乗り込み、マニュアル通り接客しているかを抜き打ちでチェックするというものです。このチェックを年間約4500件も行い、質の高いサービスの向上・維持の実現に取り組んでいます。

タクシー乗務員は「接客業」ということを忘れないための研修!

タクシー乗務員という仕事はタクシーの運転がメインであるため、交通安全を守った運転テクニックや地理や道路に関する知識だけあればできると思っている人もいることでしょう。しかし、タクシーはお客様が乗車して初めてなりたる仕事であるので、接客業・サービス業という要素が強い仕事といえるでしょう。常にお客様が気分良く乗車できるように、各タクシー会社は高品質のサービス提供のために、日々努力しているのです。